2021/11/12 【明日を楽しむレシピ】
今年もボジョレー・ヌーヴォー解禁の便りが聞かれる季節になりました。今年の解禁は11月18日木曜日の午前0時。日本は日付変更線の関係上、本場のフランスよりも約8時間早くこのワインを楽しむことができます。
いっときのような争奪戦の騒ぎはなくなりましたが、なぜボジョレー・ヌーヴォーだけが特別に解禁日が設定されているのでしょうか?知っているようで知らなかったボジョレー・ヌーヴォーについてひも解いてみました。
またボジョレー、ボージョレ、などさまざまな日本語表記がありますが、ここではボジョレー・ヌーヴォーと記載します。
<ボジョレー地区のガメイ種から造られたその年の新酒>
ボジョレー・ヌーヴォーとは、フランス南部ブルゴーニュ地方のボジョレー地区で、その年に収穫された「ガメイ種」というブドウから造られる新酒を指します。
フランスワインの名産地として「ブルゴーニュ」「ボルドー」の2大地方がよく挙げられますが、ボジョレー・ヌーヴォーもこのブルゴーニュ地方で作られる一品種なのです。
フランス語でヌーヴォーとは「新しい」、つまり「新酒」の意味。ボジョレー・ヌーヴォーとはブルゴーニュ地方のボジョレー地区でその年に収穫されたガメイ種のブドウを使って作られた、新酒ということになります。もともとは、ボジョレー地区で、秋の収穫を祝うお祭りで捧げられたのが、そのはじまりとされています。みんながワクワク待つという点では、日本の新米にも似ていますし、「初ガツオ」など初物が好きな日本で爆発的な人気を得たというのもうなずけます。
<早出しによる品質低下を防ぐために解禁日が設けられた>
ワインは通常、収穫してすぐに飲むことはできません。発酵そのものに時間がかかりますし、熟成し、落ち着かせることにもある程度の時間を要します。
しかし、ボジョレー・ヌーヴォーは、マサラシオン・カルボニック(炭酸ガス浸漬法)という製法で造られます。これは収穫したブドウを細かく砕かずに、密閉したステンレスタンクに詰め、炭酸ガスを利用して、通常よりも短時間でワインを醸造する方法です。そのため短期間によい香りで渋みの少ないフレッシュなワインが造られます。
解禁日を設けていなかった頃は、早く提供をすればその分だけ飛ぶように売れましたが、発酵が十分でない粗悪品が出回るなど、早出し競争の品質低下を招くことになりました。
そこでボジョレーワイン協会がその年の11月15日を解禁日と定めたのです。しかしこの日が休日になると出荷や運搬ができないため、1985年より11月の第3木曜日に改定されました。
また他のワインは船便で輸送されますので、フランスを出国後、2~3か月して日本に届きます。しかしボジョレー・ヌーヴォーは飛行機で空輸されるので、1日で日本に届き、前述のように時差の関係で、日本の方がフランスよりも8時間早く解禁日を迎えられるというわけです。ボジョレー・ヌーヴォーの価格が少し高めなのも、この空輸代が入っているからです。
ボジョレー・ヌーヴォーは若いワインですのでタンニン(渋味成分)も少なく、赤ワインでも冷やして飲んでも美味しく味わえます。また店頭で買えばレストランで飲むより価格もお手頃になります。
季節の食材を活用したおうち料理と美味しいワインとで、深まりゆく秋の夜を楽しんではいかがでしょうか。