最近、メディアなどで 「お墓じまい」 という言葉をよく見聞きするようになりました。「お墓じまい」の意味を、既に建っているお墓をたたむこと、或いは供養をやめること、というように認識している方が少なくないようです。
「お墓じまい」の本来の意味は、お墓の引越しや、永代供養墓などへの改葬を行う過程で、これまでのお墓を撤去して更地に戻し、墓地を管理者に返還することをさす言葉です。そのうえで、お墓の中に納骨してあったご先祖様や大切なご家族のご遺骨は、別の墓地や永代供養墓などへ移して、ご供養は継続するというのが本来のあるべき姿です。
しかし最近では「子に迷惑をかけたくない」などの理由により、お墓を撤去し供養をお辞めになられる方がいらっしゃいます。供養の継続を伴わない「墓じまい」は、先祖と縁を切ることだという方もおります。お墓は単なる「遺骨の置き場所」ではありません。お墓は、家族の絆を深め、家族の記憶を語り継ぐ場でもあります。また、お墓という「終の棲家」があるからこそ、生ある今をより安寧に過ごすことができ、そしてお墓があるから、あなたのことを、お子さんや、お孫さんがいつまでも忘れずにいられるのではないでしょうか。
ですから「お墓じまい」をされる前に、もう一度ご家族皆さんでよく話し合っていただき、また、お寺様や石材店など専門家にご相談されることをお勧めいたします。
本書では、お墓の継承者がいらっしゃらないなどの理由により、やむなく「お墓じまい」をされる方の目安になるように、「お墓じまい」にかかる費用について解説いたしますので、参考にしていただければ幸いです。
「お墓じまい」の費用は、具体的には、お墓の解体撤去と、墓地を更地に戻すことに伴い発生する費用のことをいいます。その金額は、墓地の状況やお墓の大きさなどによって大きく異なりますので、信頼できる石材店でお見積りをされることをお勧めします。また、お見積もり金額の単位は、地域によって異なりますが、墓地の広さ(1㎡あたり)で提示されるのが一般的です。但し、工事一式で提示したり、お墓の大きさ(切数/体積、kg/重量)や、石塔の本数などで提示する場合もありますので確認が必要です。
「お墓じまい」の費用は前述の通り、墓地、墓石、外柵などの大きさや状態によって変わってきますが、その他にも、地面の下の「基礎」によっても大きく変動します。
お墓は、家などの建造物と同じように、長い年月を経ても傾いたり、倒れないように、「基礎」と呼ばれるコンクリートの土台の上に建っています。この基礎は、地域の気候や風土によって大きく異なります。例えば、積雪量の多い寒冷地では1m以上もありますし、地盤が柔らかい地域では基礎に鉄筋を入れるところもあります。このように基礎が強固であればあるほど、解体費用も割高になってしまいます。また、墓地の場所が傾斜地であったり、重機が入らないような難所地の場合なども工事費用が割高になってしまいます。
その他、以下のような項目により価格差が生じますので、お見積りをとられる際に、こうした項目を含んでいるのか否か確認する必要があります。インターネットなどで「墓じまい一式〇〇万円」というような広告には要注意です。後から思わぬ追加料金が発生することが多いようです。
・墓地の立地、状態
・地盤の状態
・基礎工事の状態(深さ、鉄筋の有無)
・廃材の量
・廃材の運搬費
・廃材の処分場の費用(地域によって異なる)
「お墓じまい」をするのに伴い、併せて発生する費用として以下のようなものがありますが、地域や墓地によって異なりますので、後からのトラブルを避ける為にも、事前にお寺様や石材店とよく相談するのがよいでしょう。