墓石には色々な形がありますが、墓石だけではお墓として十分ではありません。ほかの様々な付属品や装飾品などをつけて、初めて「死者の住まい」としてのお墓になるのです。墓地の種類や規模によって違いはありますが、そのうちの主なものについて、簡単に説明しておきましょう。
お墓の型は、地方、地域によって、様々な様式を見ることができますが、大別すると「和型」と「洋型」、その他の型に区別できます。
①和型
日本のお墓の伝統的な形で、もっともポピュラーなものです。形状は角型でサオ、上台、中台、芝台というように積み上げられています。この変型として、サオの上に屋根がついたり、またサオの下にれんげ台がついたものもあります。
②洋型
近年になり外国のお墓をお手本にした横型のお墓が多く見られるようになりました。形状は横に広く、奥行が薄いもの、また俗にオルガン型といわれ、前面の上部に傾斜のついたものなどがあります。これら洋型のお墓は芝墓地などに多く見られます。
③その他の型
特殊な形として軍人のお墓やお坊さんのお墓があります。また神式の場合、仏式とはちがった型や文字が見られます。中には将棋の駒を形どったもの、銚子を形どったものというように、故人の生前の好みをあらわしたものもあります。また、自然石をそのまま使ったお墓の例も見られます。お墓は個人の歴史の証明ですから、それぞれ個性が見られるのは一向にかまいません。
「墓地を入手したらまず外柵をつくれ」、そういわれるくらい外柵は大切な部分です。巻石、葛石、境石とも呼ばれます。墓地は代々続くものですから、隣接墓地との境界をはっきりさせておかないと、後の代になってトラブルの原因になります。外柵はその役割も果たしています。そのためには、墓地全体の地盤を固め、地崩れや排水などによる陥没を防ぐ基礎工事が大切です。なお最近では、芝生墓地のように境界のない霊園もあります。
花立は水鉢を中心に左右一対になっています。一般的には下台石の前に設置され、台の上に固定されるものと、抜き差しが自由なものがあります。またステンレス製の円筒を差し込んだ凍結・サビ防止のものもあります。
花立は水鉢を中心に左右一対になっています。一般的には下台石の前に設置され、台の上に固定されるものと、抜き差しが自由なものがあります。またステンレス製の円筒を差し込んだ凍結・サビ防止のものもあります。
拝むときの場所となる石で、一番下の芝石とは別に設置します。
墓石のうしろに設置します。なお浄土真宗では塔婆を立てませんので、これは不要です。
以上の付属品・設置品はお墓参りや法要の際に必要となるので、最初からできるだけそろえたほうが良いでしょう。墓誌には戒名(法名)、死亡年月日、享年、俗名を刻みます。個人墓を合祀墓にするようになってから、建てることが多くなりました。刻字された文字が読みやすいので黒御影石がよく使われます。主に関西では「法名碑」、関東以北では「墓誌」と呼ばれています。
灯籠は石製だけでなく金属でできたものもあり、形もさまざまです。仏様に灯火をささげることが功徳とされていることから設置されます。墓前灯籠が一般的ですが、庭園用の雪見灯籠が置かれることもあります。
日当りが悪くなったり、隣のお墓に迷惑にならないよう、背丈が伸びず低めの常緑樹がよく、丈夫で手入れのしやすいものを選びます。落葉樹、大木、実のなる木などは避けたほうがよいでしょう。
語源は「カラウド」(唐櫃)で、それがなまってカロートとなったといわれています。意味は「死者を葬る棺」のことで、現在では納骨堂のことを指します。カロートはお墓と一体となっているもので、カロートがないお墓はありません。カロートの形式は、地上にあるもの(おかカロート)、半地下式、それに地下式の三種類あります。周囲の状況や土質、墓地の広さなどによってカロートの形式が決まります。
●和型墓石
日本のお墓の伝統的な形で、もっともポピュラーなものです。和型墓石は、仏舎利塔(ストゥーパ)に由来する供養塔や五輪塔を簡略化したもので、福禄(おめでたいこと)を意味しています。その多くが三段墓ですが、これは江戸時代中期に建てられ始めたと言われるお墓の形態をそのまま受け継いでいるためです。
三段墓の基本的な構成は、二つの台石(上が上台石、下が下台石)の上に細長い塔型の石を載せたものです。一番上の塔型の石は家名などを刻む最も大切な石で、竿石(棹石)とか仏石・寿石とも呼ばれています。
棹石は天、上台石を人、下台石を地に見立てており、それぞれ人石(禄石)、地石(福石)ともいいます。竿石が仏石あるいは寿石と呼ばれるのは、仏様を迎えるための石という意味がこめられているからです。
つまり、墓石はお墓に仏様を迎えて、先祖や故人の供養をするためのものですから、その心さえわきまえていれば、とくに墓石の形や大きさにこだわる必要はないと言えます。
●供養塔
和型墓石は江戸時代中期以降に普及したものであり、それ以前には、五輪塔などの塔型の墓石が建てられていたのです。この五輪塔は平安時代中期から始まり、鎌倉時代以降から一般的に普及するようになりました。これは密教の教えにもとづき「地・水・火・風・空」という宇宙を構成する五輪を、それぞれ「方・円・三角・半円・宝珠」の形で象徴して、下から積み上げたものです。正面にはそうした意味を表す種子(サンスクリット文字)を、それぞれの石に刻んでいます。 また、五輪塔は人間の身体も表しています。つまり、人と仏が一体になった姿を表しているのが五輪塔なのです。
五輪塔のほかにも、墓石として歴史のある供養塔には、層塔(何層もの屋根を重ねた塔)、宝篋印塔(「宝篋印心呪経」を納めた塔)などがあります。 これらの塔型の墓石は、現在でも単体で墓石として用いられたり、あるいは和型墓石と組み合わせて用いられたりしています。
●ニューデザイン墓石
和型、洋型といった既製の墓石に工夫を加え、製品化したお墓をニューデザイン墓石といいます。ひと口に工夫といっても、その方法はさまざまです。
いくつかの石を組み合わせたり、墓石になめらかな曲線を取り入れたりといった石そのものへの工夫もあれば、表面に刻む文字を建墓者の好きな言葉にしたり、花や絵を彫り込んだといった彫刻面での工夫もあります。
●オリジナルデザイン墓石
オリジナルデザイン墓石とは、既製の形にとらわれずに建墓者やその家族が自由な発想でデザインしたお墓のことを指します。 これにはその人の仕事や趣味、人生を象徴的に表現したものが多く、お墓でありながら同時にモニュメント的な役割も果たしています。