2013/04/12 【カルチャー情報】
小津安二郎監督と聞き、「連想するものは何?」と問われれば、かなりの確率で「東京物語」というキーワードが出てくるのではないでしょうか。東京物語は1953年に製作され、笠智衆主演で世界各国から称賛を受けた世界に冠たる日本映画です。
全優石のCMが劇場で流れる「東京家族」は、その小津安二郎監督の名作「東京物語」をモチーフにして描いた映画です。監督は人間描写に定評のある日本映画界の巨匠・山田洋次。「東京家族」で通算81本目となりました。監督の年齢は今年で82歳を迎えますが、その衰えを知らない人間観察、時代の空気を読む力には脱帽させられます。
テレビや雑誌のインタビューの中で、常日頃小津作品を絶賛している山田洋次監督。東京家族は、山田氏が東京物語にオマージュを捧げた作品となっています。物語を一言で表現するなら、東日本大震災後の日本を舞台に、“家族のきずな”と“すれ違い”を描いた人情喜劇といったところでしょうか。
「東京家族は」ぴあ満足度ランキング第1位(1月18・19日公開映画)、友人家族にすすめたい映画1位(ムービーウオーカー試写調べ)を獲得しています。映画を観た人は「家族について深く考えるきっかけとなった」「映画を観た後、故郷にいる父・母のことを考えました」「現代社会を実にリアルに描写していた。若い人の心にもしみいると思う」「ストーリー展開、風景、色づかい、音楽などトータルで素晴らしい」などのコメントがたくさん寄せられました。観賞後、あなたをあたたかい何かがふんわりと包みます。
映画の簡単なあらすじをご紹介します。
瀬戸内海の小さな離島で平和な暮らしを送っていた平山周吉(橋爪功)と妻のとみこ(吉行和子)は、東京に暮らす3人の子供たちに会いに行くことを決意する。周吉・とみこの二人は、個人病院を開く長男・幸一(西村雅彦)の家を訪れる。美容院を営む長女・滋子(中嶋朋子)、舞台美術の仕事に携わる次男・昌次(妻夫木聡)も集まり、久しぶりに家族団らんの食事をする。しかし、多忙な日々を過ごしている子供たち3人は両親の面倒を見るのを嫌がり、両親をホテルに宿泊させようとする。周吉は寂しさを覚え、長いこと禁酒していたお酒を飲んで一騒動を起こしてしまうのだった……。
映画の結論はここでは言えませんが、毎日の暮らしの中で、当たり前だと感じていることに、本当の幸せがあるのかもしれない――急ぎ足で生きている毎日に、ふと足を止めると、何気ない幸せに気づくことがあるのかもしれません。どこにでもある普通の家族の日常・風景を丁寧に描いています。