2013/08/06 【カルチャー情報】
世界に名を馳せた、日本を代表する映画監督「黒澤明」。彼の作品を語る時、どうしても外せないものがあります。「生きる」です。海外でのこの作品に対する評価は高く、彼の代表作の1つとなっています。人はなぜ生きるのでしょう。そして、いかに生きるべきなのでしょうか。
「生きる」という作品に引き込まれる
市役所で市民課の課長を務める、無遅刻無欠勤のごくありふれた、まじめを絵に描いたような公務員である主人公「渡辺」。
平 たんな日々に活力も失い、ただただ過ぎていく毎日。ある日、体調不良から受けた診察で、胃癌だと知ります。不意に訪れた死に直面し、生きる意味や希望さえ も失ってしまったそんな時、偶然1人の若い女性と知り合います。彼女の自由奔放だが前向きな生き方に魅かれ、少しずつだが自分にもまだ何かをやれる力が 残っていることに気付かされることに。
事なかれ主義で官僚主体だった今までの生活に疑問を抱きます。そしてそれまでの渡辺ならば考えられなかったが、通り一遍の仕事ではなく、上司を説得して住民の要望であった公園を完成させます。完成を喜ぶのもつかの間、渡辺は奇しくもその公園で息を引き取ってしまうのです。
彼の死後、住民からは彼の功績をたたえ感謝の声が上がりました。渡辺の残した公園は、市民の憩いの場となり、子どもたちの笑顔が行き交う場所になったのです。
黒澤監督は一般人の感覚や目線、立場、日常を大切に多くの作品を作り上げてきました。黒澤監督は、「この映画の主人公は死に直面して、初めて過去の自分の無 意味な生き方に気が付く。いや、これまで自分がまるで生きていなかったことに気が付くのである。そして残された僅かな期間を、慌てて立派に生きようとす る。僕は、この人間の軽薄から生まれた悲劇をしみじみと描いてみたかったのである」と述べています。「人生後半も過ぎて、新たな発見がある。それが人生で ある」と考えさせられる作品です。